静電気力による吸着と静電チャック②

前回の投稿では静電気力による吸着を利用した技術の例として静電チャックを取り上げましたが、少し時間をおいて考え直してみるとやはりまだ見落としていた点や勘違いしていた点がいくつか見つかりました。

①静電チャックの冷却機構について

吸着熱のことを知ったばかりだったのでそれにとらわれすぎて、静電チャックの冷却機構は吸着熱を抑えるためのものだと勘違いしていたことに気づきました。

エッチングにはウェットエッチングとドライエッチングがあります。
ウェットエッチングは液体環境下で行われるため、イオンの存在などにより電荷の移動が起こりやすく静電気が生じにくく、静電チャックは使えません。
静電チャックが使われるのはプラズマを使うドライエッチングということになります。
静電チャックに冷却機構があるのはプラズマ熱によるウエハの温度上昇を抑えることが主な目的です。

プラズマ熱はウエハの温度を数百度近く上げるほどの発熱となります。吸着熱の影響はそれと比べるとごくごくわずかです。
ウエハがプラズマ熱で高温になり、その熱が静電チャックに伝わるため、冷却機構が必要になります。

②吸着による固定方法を選ぶ理由

クランプによる固定方法ではなく、わざわざ吸着によって固定するのはなぜだろう、という視点も欠けていました。

これもウエハの熱を抑えるということに関係しますが、クランプのように物体の端だけを固定する方法だとウエハとの接触面積が小さいため、ウエハの熱はクランプに伝わりにくいです。つまりウエハに熱がこもりやすくなります。

一方、静電チャックによる吸着の場合はウエハの全体と接触することになるため、ウエハの熱が静電チャックに伝わりやすくなり、ウエハの熱を効率的に逃がすことができます。

またクランプは固定する部分に局所的に強い力がかかりますが、静電チャックの場合は全体に均一に力がかかるので固定する物体を傷つけにくいというメリットもあります。

③静電気と導電性の関係

プラスチックの下敷きで髪をこすると髪の毛が逆立ちますが、布で髪をこすっても同じように髪の毛が逆立つことはありません。
これは物体には帯電しやすいもの、しにくいものがあるためです。

プラスチックなどは導電性(電気の通しやすさ)が低く絶縁体に分類されます。絶縁体の表面の電荷は絶縁体の中を移動できないため、絶縁体は表面に静電気を蓄えやすいと言えます。

セラミックも絶縁体に分類されます。
静電チャックにおいては静電気力が大きい方が吸着する力が大きくなるため、素材には絶縁体が好まれます。セラミックは絶縁体であり、かつ耐熱性があり、熱伝導性も高いため、静電チャックの材料としてよく使われます。

推測しながら先読みするのは大事ですが、手持ちのカードが少ない状態で自分の持っている知識だけで先読みしようとするとかえって誤った方向に行ってしまうということを実感しました。
自分の持っている知識の他に、こういう考え方もあるんじゃないか、この場合はどうなんだろう、他の要素もあるんじゃないか、と常に多角的に考えることを忘れないようにします。
物理の基礎知識がない状態で読めていない部分も多いので、今の時点では読めないなと思うところは深追いしすぎず課題として残しておいて、岡野の化学のあと橋本の物理が終わった時にまた見直しします。

5/15(水)学習時間:5.5H

・岡野の化学(76)~(77)の途中まで
DNA配列の構造式を検索して印刷し、A,G,C,Tで色分けして五員環とリン酸のつながりを確認していたところ、構造式の隣に「5’末端」→「3’末端」と書いてあったのでどうやらリン酸のつく炭素の位置を指していて、AGCTの並びを読んでいく方向にきまりがありそうだと予測。また以前にタンパク質のN末端・C末端という話が出てきたのでそれとも関係がありそうだと予測。
・静電チャックについて調べ直し。
課題)
プラズマと蛍光・燐光の違いについて調べる。
静電チャックの特許明細を探して読めそうな部分は読んでみる。

その他
・4565 結果を出すためのスパイラル学習法

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
うずら
〈レバレッジ特許翻訳講座16期生〉 翻訳とは無関係の会社員生活を送っていたが、30歳になったのを機に「これが最後の進路選択のチャンス」と考え直し、文系出身・翻訳未経験から特許翻訳者への険しい道を進むことを決意。