デンプンにヨウ素溶液を加えると青紫になるヨウ素デンプン反応がありますが、その原理について調べてみました。
デンプンのらせん構造
まずヨウ素デンプン反応を示すデンプンの構造について確認します。
デンプンにはアミロースとアミロペクチンがあります。
アミロースは直鎖状でアミロペクチンには枝分かれがあるという違いがありますが、どちらもα-グルコースの1位と4位のヒドロキシ基から水分子がとれて縮合重合したものです。
このときのグリコシド結合の結合の角度によって、α-グルコースがどんどんつながっていくと立体的に見たときにらせん状の構造になり、分子内水素結合によってこの構造が安定化します。
ヨウ素とデンプンの包接化合物
デンプンのらせん構造の中心に空洞ができて、そこに下図のようにヨウ素が入り込みます。
このようにある分子のつくる空洞の中に別の分子が入り込んで分子間力でくっついている化合物を包接化合物といいます。
分子間力にも色々ありますが、ヨウ素とデンプンの場合は電荷移動力という力が働いています。
電荷移動力の詳細は今の時点では難しくてきちんと理解できていないのですが、ある分子の軌道ともう一方の分子の空の軌道が相互作用して電子が非局在化することによる力のことで、これまでに見た共役の考え方と似たようなものと捉えています。
ポリヨウ素イオン
デンプンとヨウ素の包接化合物において、ヨウ素はI3–やI5–のポリヨウ素イオンと呼ばれる状態で存在しています。
ポリヨウ素イオンについてWikipediaで見るとI3–やI5–の他にも非常にたくさんの種類が出てきます。
ヨウ素イオンがこのように様々な形をとることができるのはヨウ素が結合に5d軌道を使うことができるためです。
これも詳細な理論は理解できていないのですが、励起による原子価殻の拡大という考え方があるということを以前に学習しました。
ヨウ素の場合も励起によりひとつ外側の5d軌道を使えるようになることで、このように多様なイオンを構成することができると考えられます。
上記のポリヨウ素イオンがデンプンと包接化合物を作る際の電荷移動等で特定の波長の光が吸収され、吸収されなかった光がヨウ素デンプン反応の発色として目に見える、というのがヨウ素デンプン反応の原理です。
アミロースとアミロペクチンの呈色の違い
デンプンにはアミロースとアミロペクチンがあり、どちらもらせん構造を持つのでヨウ素デンプン反応を示します。
ただしその色には違いがあります。
真ん中のブドウ糖はグルコースのことなのでらせん構造を持たず反応を示しません。
右のバレイショデンプンはアミロースを含むもので青紫色を示します。
左のモチトウモロコシデンプンはアミロペクチン100%のデンプンで赤紫色を示します。
実はアミロースとヨウ素の包接化合物において、アミロースの分子量が低下するにともない、青色から褐色へ変化することが分かっています。
これはアミロースの分子量が減少することによりヨウ素とアミロースの相互作用エネルギーが減少することで、吸収する波長が変化するためです。
アミロースとアミロペクチンについて考えてみると、両者の違いは枝分かれの有無にあります。
アミロペクチンの場合は枝分かれがある分、同じ数のα-グルコースでできたアミロースよりもひとつのらせん構造が短くなります。
このことから、らせん構造が短いアミロペクチンの場合は、アミロースの分子量が減った場合と同じようにヨウ素との相互作用が小さくなり、赤褐色になると考えられます。
ヨウ素デンプン反応のようなポリヨウ素イオンの錯体はポリビニルアルコールなどのポリマーにも応用されているようなので、関連する特許明細書を読んでみます。
参考)
https://www.savemyexams.com/a-level/biology/ocr/17/revision-notes/2-foundations-in-biology/2-2-biological-molecules/2-2-5-polysaccharides/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj1959/24/1/24_1_54/_pdf
https://fiu-iodine.org/studies/
http://www.photosynthesis.jp/youso.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/68/10/68_560/_pdf
5/11(土)学習時間:11.75H
・岡野の化学(69)~(71)
・ヨウ素デンプン反応について整理
・多糖類について英語の資料を読んで復習
課題)
ポリヨウ素イオンとポリビニルアルコールの錯体についての特許明細書を読んでみる
その他
・0842 青色LED
・お金についての本を少し読んだ
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