前回の投稿で「フッ素樹脂が撥水と撥油性を持つ理由」について、
「油自体の表面張力が小さい(表面で広がりやすい)のになぜフッ素樹脂は油をはじくことができるんだろう?」
と疑問に思っていましたが、答えが分かりましたのでまとめます。
引っ掛かっていた原因は、「表面張力の強弱は相対的なもの」という点を見落としていたことにありました。
水の表面張力
界面活性剤について調べているときに学習しましたが、もう一度水の表面張力について整理します。
水分子どうしの間には水素結合がはたらいているのでした。
しかし表面部分では外側に水分子がないので、水素結合の引き合う力が外側に働かず、内向きに引っ張る力が強くなります。
この力が表面張力で、水面が球状に膨らむ原因です。
このような感じです。(「拡大」の矢印の向きが逆です、すみません…)
水と油の表面張力
油にも表面張力は働きますが、それは水に比べると小さな力です。
ここで注意しないといけないのは、水と比較したときに「相対的に」小さいということです。
酸と塩基の強弱のところで勉強したように、相手が変わればその相対的な強弱も変わるのです。
フッ素樹脂との比較
液体の水と油について表面張力を見てきましたが、固体にも同様の力が働いています。
固体の場合は表面自由エネルギーという言葉が使われるようです。
表面張力は単位長さの線を引っ張る力であるのに対して表面自由エネルギーは単位面積の面を広げる力ということで単位に違いはありますが、比較することが可能です。
(参考サイト)
比較した表が次のようになります。
固体の一番下の行にあるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、商品名のテフロンで有名)が代表的なフッ素樹脂です。
この表を見ると、表面張力(表面自由エネルギー)の大小関係は以下のようになります。
水 > 油(オリーブオイル) > フッ素樹脂(PTFE)
先ほど油は水よりも表面張力が小さいと書きましたが、フッ素樹脂と比べるとフッ素樹脂の方が油よりも表面自由エネルギーが小さいということになります。
表面をフッ素樹脂で加工してあるフライパンに水や油を垂らした時のことを考えてみます。
もしフッ素樹脂の方が水や油より表面自由エネルギーが大きければ、水や油の分子は引っ張られてフッ素樹脂の表面上にベターっと広がってしまいます。
ところがフッ素樹脂の表面自由エネルギーが小さいので、水や油の分子はフッ素樹脂の方には引っ張られず、球状になって転がるのです。
フッ素樹脂の表面自由エネルギーが小さい理由
では、フッ素樹脂はなぜ表面自由エネルギーが小さいのでしょうか。
前回の投稿で書きましたが、フッ素樹脂のC-F結合は非常に強い共有結合です。
分子内での結合の力が強いため、分子間の力は弱くなり、したがって表面自由エネルギーも小さくなります。
少したとえ話で考えてみます。
学校のクラスの中に友達同士のグループができますね。
そのグループにも色々あって、
「他のグループも巻き込んでみんなで仲よくしよう」というタイプと、
「自分たちのグループだけでいた方が楽しいから他のグループとは離れていたいな」というタイプ
があると思います。
これを分子にあてはめてみると、水分子は前者で、フッ素樹脂は後者になります。
もちろんこの中間には「きっかけがあれば他のグループとも仲良くするけど普段は別行動していたいな」とか色々なグループがあります。
「強弱は相対的なもの」
何と比較して強い弱いと言っているのかを常に意識して考えないといけないですね。
5/5(日)学習時間:12.25H
・岡野の化学(60)~(62)
・フッ素樹脂の撥油性について
・界面活性剤についての入門書を少し読んで内容をマインドマップに整理
課題)
・界面活性剤の起泡性・消泡性のメカニズムについてもう少し調べる
・界面活性剤の粘度の話からレオロジーという学問分野があることを知ったので、身近な食品の分類や撹拌技術を調べてみる
その他
・3707 会社員のポジションを生かす
・3757 優先順位と職探し
・4330 学習の振り返りと展望
今あまり残業もなく安定的にお金をもらえている会社員としての立場はかなり恵まれていると思うのでこの環境をうまく使っていくことを考える
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