共鳴効果と誘起効果と配向性

前回の投稿に続いて、芳香族求電子置換反応では官能基によりオルト・メタ・パラのどの位置につくか(配向性)が異なるという話です。

前回取り上げた英語の資料に、
「置換基がオルト・メタ・パラのどの位置につくかは官能基の性質により、一般に共鳴効果が誘起効果に優先するというルールがある」
ということがかいてありましたが、配向性を考えるときに「共鳴効果が誘起効果に優先する」とはどういうことでしょうか。

前回はメトキシ基というひとつの基について共鳴効果と誘起効果が対立する場合を考えましたが、ここで言われているのはまた別のお話で、
ひとつのベンゼン環に「共鳴効果をもつ基」と「誘起効果をもつ基」が両方ついていたらどうなるのか?ということです。

誘起効果:メチル基-CH3(トルエンの場合)

また同じ資料を見ていきます。
前回も取り上げましたが、誘起効果をもつ基の代表としてメチル基がひとつついたトルエンを考えます。

トルエンのメチル基は誘起効果により電子供与体と考えることができ、ニトロ化する際には中間体に第三級カルボカチオンの安定性した構造をとることができるため、オルト位とパラ位が選択されやすいということでした。

共鳴効果:メトキシ基-OCH3(アニソールの場合)

こちらも前回登場したアニソールです。
アニソールのメトキシ基は誘起効果と共鳴効果の両方がありますが、共鳴効果の方が強いので共鳴効果をもつ基として考えます。
ではアニソールのニトロ化の配向性を見てみます。

この場合もオルト位とパラ位が選択されます。
理由はやはり中間体の安定性から説明されます。
ただし、今回はメトキシ基が共鳴効果をもつ基なので、共鳴状態がつくれるかどうかという点に注目します。

オルト位とパラ位はメトキシ基が共鳴構造をとり安定化しますが、メタ位はメトキシ基の共鳴構造がかけません。よって、オルト位とパラ位が選択されるということになります。

共鳴効果と誘起効果:両方の基がある場合

さて、ここからが今回のテーマですが、「共鳴効果をもつメトキシ基」と「誘起効果をもつメチル基」が両方ついていたらどうなるでしょうか?

このようにパラ位にメトキシ基とメチル基がついている化合物をニトロ化することを考えます。
パラ位はすでにお互いが場所をとっているので無視しますと、それぞれのオルト位にニトロ基がついてほしいということになります。

ではどちらが優先されるのか?というときに、「共鳴効果が誘起効果に優先する」という原則が出てくるのですね。

ここでは-OCH3が-CH3に優先するので、結果として-OCH3のオルト位に置換基がついたものが主生成物になるということです。

官能基の性質によってパターンはたくさんあるのでひとつひとつ調べるときりがありませんが、置換基のつく位置によって化合物の物理的・化学的性質が変わってくるため、目的の化合物を合成するときにどの位置で置換されるかということは重要だと思いました。
そこで実際の特許に配向性の話がどのようにかかわってくるか特許庁DBで検索してみました。

「配向性」「オルト配向性」「メタ配向性」「パラ配向性」などと入れて検索してみましたが、「配向性」というキーワードで引っ掛かってきたのはほとんど液晶関係の用語でした。
これはこれで知っておきたいので追加で調べますが、液晶関係での配向性は分子全体の向きを変えるという話のようなので、今回注目している置換基の位置の配向性とは少し違うような気がします。

そこで今度は芳香族求電子反応の配向性について調べている中で「ハメット則」という言葉が出てきたのでそれを使って再度検索してみました。「ハメット」で検索すると「ハメット則」「ハメット定数」など2000件以上ヒットしました。
これはやはり調べておかないといけないようなので、どのような概念か説明できるようにもう少し丁寧に調べます。

5/2(木)学習時間:9.75H
・岡野の化学(49)~(51)
・配向性について
・アミンに関する英語の資料
課題)
・ハメット則について説明できるようにする
・液晶における配向性について調べる
・界面活性剤についてもう少し調べたいと思い、入門書として「図解入門 よくわかる 最新 界面活性剤の基本と仕組み」を買ってみたので読む

その他
・2691 知識をどこまで深堀りするか
・2040 会社をとび出す前に
・2757 CV作成のコツ

・大手翻訳会社の応募フォームや講座の内容をもとにCVの枠を作った。
 →1か月ごとを目安に更新していく。
・実際の特許翻訳の求人を10件ほど印刷してどういったスキルや専門分野が求められているかを確認した
 →セキュリティ対策についても書かないといけない、など新たな発見があった

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うずら
〈レバレッジ特許翻訳講座16期生〉 翻訳とは無関係の会社員生活を送っていたが、30歳になったのを機に「これが最後の進路選択のチャンス」と考え直し、文系出身・翻訳未経験から特許翻訳者への険しい道を進むことを決意。