太陽電池に関する特許明細書を読んでいてフォトリソグラフィの話が出てきたので、フォトレジストのネガ型とポジ型について調べました。
フォトリソグラフィとは
光を照射することで半導体基板に電子回路のパターンを描く工程をいいます。
上の図には書かれていませんが、基板に感光性物質を含むレジスト溶液を塗布した後に、プリベークという工程で熱を加え、塗布したレジスト膜から溶媒を蒸発させます。
その後パターンを描いたフォトマスクのうえから紫外線を照射し、不要な部分を現像液に溶解して除去することで基板上にパターンを形成します。
この露光・現像の工程で、露光部分と非露光部分のどちらを残すかによりネガ型とポジ型という2種類に分けられます。
ネガ型の場合は露光面が基板上に残り、ポジ型レジストでは非露光面が残ります。
それぞれどのようにしてレジストにパターンが形成されるのかを見ていきます。
ネガ型レジスト
ネガ型の場合、感光性物質のビスアジド化合物と環化ゴム系樹脂(環化イソブレンなど)がレジスト材料に使われます。
紫外線を照射するとビスアジド化合物のアジド基からN2が取れて非常に反応性の高いナイトレンに変わります。
ナイトレンが不対電子をもつか孤立電子対を持つかというのは一重項状態と三重項状態という電子のスピンの向きにかかわる軌道の入り方の違いがあるようですが、この点はまだ理解できていません。
いずれにしてもナイトレンは強い求電子性を示し、環化ゴムの二重結合に付加したり、あるいはC-H結合の間に挿入反応するなどして架橋構造を作って硬化します。
この光硬化反応により、ネガ型レジストの照射された部分は現像液(主に有機溶剤)に不溶化するため、現像後に露光部分が残ってパターンが形成されます。
ポジ型レジスト
ネガ型の場合はレジストパターンが現像液により膨張して解像度(パターンの精緻さ)が低下するという難点があるそうで(なぜかはまだ理解できていません)、高解像度のパターンを作る場合はポジ型が使われます。
ポジ型レジストの材料としてはノボラック系樹脂とジアゾナフトキノン(DNQ)が、現像液としてはアルカリ溶液が使われます。
ノボラック樹脂はフェノール系樹脂ですので酸性を示し、アルカリ溶液と反応して溶解します。
しかし、レジスト溶液中でジアゾナフトキノンと混合している場合はジアゾナフトキノンがアルカリ溶液への溶解を阻害します。
この理由がはっきり書いてあるものを見つけられなかったのですが、ノボラック樹脂の-OH基以外の疎水性部分とジアゾナフトキノンが疎水性相互作用を示してノボラック樹脂の周囲がジアゾナフトキノンで覆われることでアルカリ溶液中の陽イオンが反応しづらくなったり、ノボラック樹脂の-OH基とジアゾナフトキノンのOとが水素結合することでアルカリ溶液中の陽イオンと反応しづらくなったり、といった理由のようです。
このレジスト溶液に紫外線を照射するとウルフ転位と呼ばれる反応が起こり、ジアゾ基のN2がとれてケテンを生成し、さらにここに水分子が付加してインデンカルボン酸を生成します。
インデンカルボン酸はカルボン酸で酸性ですから現像液のアルカリ溶液に可溶になります。
こうしてポジ型レジストは露光した部分だけがアルカリ溶液に溶解して除去され、それ以外の非露光部分が残ってパターンを形成します。
こうしてみると、フェノールやカルボン酸の性質、樹脂の種類、架橋構造による硬化、アゾ基が光に反応しやすい、といった岡野の化学の有機化学で勉強したことが色々つながっています。
電気・機械系の要素が強いかと思っていた半導体分野も、切り取る箇所によっては有機化学で勉強したことが強く出るのだなということが分かりました。
6/4(火) 学習時間:7H
・岡野の化学(107)
・フォトレジストのネガ型とポジ型について
課題)
・太陽電池に関する特許明細書のつづき
・化学増幅型レジストについて調べる
・半導体製造工程について図を見て理解しているが実際のスケールやどのくらいの温度・時間で処理するのか、といった点はリアルに見えてこないので製造工程の動画などがないか探してみる
その他
・4246 忙しい会社員のための学習スケジュール
・3122 書いて脳を活性化させる
特許明細書を探すと半導体関係の明細書にあたることが多いので「はじめての半導体プロセス」を購入した。最初から読もうとすると背景知識が足りずとっつきにくかったので自分で少し調べて知識がついた部分から読んでみる。
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