シクロデキストリンの包接現象と応用について

前回の投稿で「ヨウ素デンプン反応は包接化合物がつくられることで起きる反応」であるということを書きました。
その関連で今回は包接化合物をつくる分子として代表的なシクロデキストリン(CD)について調べたところをまとめてみます。

シクロデキストリンの構造

シクロデキストリンは図のようにグルコースが環状に結合した形をとります。
代表的なものはグルコース分子が6~8個つながったもので、構成単位のグルコース分子の個数により以下のように呼び分けされています。
6個の結合:α-シクロデキストリン
7個の結合:β-シクロデキストリン
8個の結合:γ-シクロデキストリン

https://www.unitedstyle-hrl.com/post/cyclodextrin

ホスト分子としてのシクロデキストリン

包接化合物とは、一方の分子が空洞を作り、もう一方の分子が分子間力によってその空洞内に位置するような化合物のことでした。
空洞をつくる方の分子をホスト分子、その空間に入り込む分子をゲスト分子といい、包接化合物はホスト-ゲスト化合物とも呼ばれます。

シクロデキストリンはホスト分子にあたります。
先ほどの図にあるように、シクロデキストリンを横から立体的に見てみるとちょうど底の空いたコップのようになっており、中央の空洞にゲスト分子を包接することができます。

シクロデキストリンの包接化合物に働く分子間力は様々なものが考えられますが、主な分子間力として疎水性相互作用が挙げられます。
シクロデキストリンを構成するグルコースの2位、3位、6位のヒドロキシ基はそれぞれ開口部に位置するため開口部は親水性を示します。一方、中央の空洞の内面には疎水性のCH結合が位置しています。
このため、水中にシクロデキストリンと疎水性の分子が一緒に存在すると、疎水性分子はシクロデキストリンのもつ疎水性の空洞部分に入り込み、包接化合物を形成します。

https://www.nisshoku.co.jp/product/study-cd.html

シクロデキストリンの用途

α、β、γのそれぞれのシクロデキストリンは水溶性や消化性が異なり、大きさに応じて包接できるゲスト分子が変わります。またシクロデキストリンに適切な官能基をつけて水溶性や消化性、包接できる分子を調節することにより、様々な用途で利用されています。

例えば、余分な脂を包接して対外に排出するダイエットサプリや、いやな臭いのもとを包接することにより消臭剤として利用されています。医薬分野では水に溶けにくい医薬品を可溶化したり、分解しやすい医薬品を安定化する役割で利用されています。

身近なところでは市販のチューブ状わさびの辛味成分を保存する役割で使われています。
関連する特許も5件見つかり、「シクロデキストリンに香気成分を接触させて包接することで、香気成分が分解等により消失するのを防ぐことができ、香気成分による風味をより維持することができる」という形で記述されていました。

界面活性剤との関係でも探してみたところ、消臭効果を謳っている洗剤などにはシクロデキストリンが使われているようで、関連する特許があったので読んでみます。

参考)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/35/2/35_2_116/_pdf
https://www.chem-station.com/blog/2009/09/post-106.html
https://cosmetic-ingredients.org/stabilizer-miscellaneous/3939/
http://www.cyclochem.com/cd/001.html
http://scdj.jp/about/

5/12(日)学習時間:11.5H
・岡野の化学(72)~(75)
・タンパク質の一次構造~四次構造について
・シクロデキストリンについて
・カチオン界面活性剤の用途について
課題)
・ポリヨウ素イオンとポリマーの包接化合物について特許明細書を少し読んでみようと思ったが液晶関係の知識がなくあまり読めなかったので液晶についても企業のHPなどから調べてみる
・浸透膜のしくみについて関係する資料を読んで整理する

その他視聴ビデオ
・0661 快適なフリーランス生活のために

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うずら
〈レバレッジ特許翻訳講座16期生〉 翻訳とは無関係の会社員生活を送っていたが、30歳になったのを機に「これが最後の進路選択のチャンス」と考え直し、文系出身・翻訳未経験から特許翻訳者への険しい道を進むことを決意。