2週間前にEUVの光学系部材(フォトマスク、ミラー)に関する特許を読むことにしたのですが、EUVが登場する背景となった微細加工の歴史を調べ、その関係でトランジスタの変遷について調べてだいぶ時間がかかってしまいました。
まだ背景知識が不足しているのでAIにこの特許に出てくる専門用語を頻度順に出してもらったところ、ガラスの膨張率とチタニア(酸化チタン、TiO2)がキーワードのようだったので、昨日・一昨日はそのあたりのことを調べていました。
今回はガラスの膨張とフォトマスク材料によく使われる石英ガラスについて書いてみます。
熱膨張
物質を熱すると長さや体積が少しずつ大きくなることがありますが、これが熱膨張と呼ばれる現象です。材料により膨張のしやすさには違いがあります。
温度が1℃上昇したときに物質がどれだけ膨張するかを示した値を、熱膨張率あるいは熱膨張係数(単位:1/Kもしくは1/℃)といいます。
先ほど長さや体積が大きくなると書きましたが、熱膨張係数には長さの変化を示した線膨張係数と、体積の変化を示した体積膨張係数があります。
体積膨張係数は容器や封止材料など、体積変化が製品の機能や安全性に影響をもたらす場合の指標になりますが、ガラスの場合は一般的に線膨張係数が指標とされています。
フォトマスク等の光学部材に使われるガラス基板の熱膨張率が高いと、露光の際の熱によってガラス基板の表面が平坦でなくなり、パターンに歪みが生じたり、焦点がずれたりして半導体デバイスの性能や歩留まりを低下させる恐れがあります。
そのため、材料となるガラスの熱膨張係数を低くすることが重要となります。
石英ガラスの特徴
ガラスには様々な種類があります。
代表的なものを少しマインドマップに整理してみました。
半導体のフォトマスク材料としてよく使われているのが石英ガラスです。
石英ガラスはSiO2の純度が非常に高いことが特徴です。
下表を見ると石英ガラスは他のガラスよりも熱膨張率が低いことが分かります。
石英ガラスの熱膨張率が低い理由は、
・不純物が少ないため、Si-Oの結合による網目構造が壊れにくい
・熱を加えた際にSi-O間の結合距離は長くなるが、Si-Oの結合の角度が変化することで全体としての長さに影響が出にくくなる
ということが挙げられます。
二酸化ケイ素(SiO2)はダイヤモンドと同じ正四面体の共有結合結晶の例として岡野の化学で学習しましたが、ガラス状態では結晶構造ではなくアモルファスの状態なので、Si-Oの結合角度が変化するということが可能になります。
石英ガラスの製法にどのようなものがあるか、ガラスの熱膨張とチタニアがどう関係するのかという点については次回以降の記事にしたいと思います。
また、他の種類のガラスについてもそれぞれどのような特許があるか探してみます。
参考)
・三芝硝材㈱“ガラスの種類と組成”ガラスコラム https://www.sanshiba-g.co.jp/column/kisochisiki/post_2.html(参照 2024-07-05)
・HOYAグループオプティクス事業部“熱的性質”https://www.hoya-opticalworld.com/japanese/technical/004.html#4_3 (参照 2024-07-05)
・荒川技研“線膨張係数と体膨張係数を理解しよう”https://a-giken.co.jp/archives/2232(参照 2024-07-05)
・小野田 元「石英ガラス概論(第2回)」Journal of Advanced Science, Vol.11, No.2, 1999
7/5(金)学習時間:6.25H
・岡野の化学(150)
・ガラスの膨張特性、ガラスの種類について
課題)
・石英ガラスの製法、ゼロ膨張ガラスについてまとめる
・窓ガラスの青みの理由について
その他
・4481 進捗報告へのコメント
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