太陽電池に関する特許明細書を読んでいて透明電極という言葉が出てきたのでこれについて調べてみました。
太陽電池では表面に電極を用いる場合、太陽光がその下の光吸収層に届くのを妨げないように、透明電極が用いられることが多いです。
透明電極はガラスのように透明でありながら電気を通す性質を持ちます。
太陽電池の他にも液晶ディスプレイやタブレット等のタッチスクリーンなどによく使われます。
透明電極の中でよく用いられるのがITOと呼ばれる、「酸化インジウム(III)(In2O3)」にスズをドープしたものです。
このITOについて、電気を通し、かつ透明である、という性質を考えてみました。
電気伝導性
酸化インジウムは下のようにInとOがイオン結合しているところに、部分的にInの代わりにSnが入っています。
ここでInは3価のイオン、Snは4価のイオンですので、Sn原子を1個ドープすることで結合に使われない余分な電子が1個発生することになります。
また酸素が欠乏した場合にも、結合の相手を失って電子が余ることになります。
これら結合に関与しない自由電子は室温のわずかな熱エネルギーでで伝導帯に入り移動することができるため電流が生じます。
透明性
ある物質が透明に見えるということは、その物質が可視光を吸収も反射もせず透過するということになります。
このことは物質のバンドギャップと関係があり、バンドギャップが可視光よりも大きければ可視光は吸収されずに透過されます。
バンドギャップの大きさを表すのにeV(エレクトロンボルト)という単位が使われます。1eVは1つの電子が1Vの電位差(高から低に向かって)を移動するときにその電子が得る運動エネルギー(位置エネルギーから運動エネルギーへの変換)です。
光の波長はnmの単位で表されますが、光には波の性質と粒子の性質があるとのことで、粒子性に着目するとeVを用いて可視光のエネルギーを表すことができるようです。
可視光のエネルギーはおよそ1.6eV~3.3eVですが、ITOのバンドギャップはおよそ3.75eVであるため、可視光をすべて透過し、透明に見えるということになります。
ただ反射についてもバンドギャップとの関係から説明できるのかはよくわからなかったので課題として知子の情報に入れました。
ITOの課題
ITOは透明電極として優れた電気伝導性と透明性を持っていますが課題もあります。
インジウムがレアメタルであり原料供給に不安があること、ITOはイオン結晶構造のため折り曲げたりすると同じ電荷のイオン同士の反発によって割れてしまい柔軟性にかけること、などです。
そのためITOに代わる透明電極として、グラフェンや銀ナノワイヤ、あるいは両者の組み合わせによる透明電極が開発されています。
グラフェンは岡野の化学で共有結合結晶の例でグラファイトについて学習したときに出てきましたが、炭素の六角形の構造が二次元空間にハチの巣状に広がってできた1枚の層を指します。
グラファイトのC-C間のπ結合を電子が自由に移動できるため電気を通しやすいということでしたが、グラフェンの場合も同じです。
気になったのはグラファイトは黒鉛と呼ばれることからもわかるように黒色なのに、なぜグラフェンは透明なのかという点です。
グラファイトとグラフェンの違いは単層か多層かという点なので、グラファイトのグラフェン層間で非常に光をよく吸収するということかと推測しますが、そもそもグラファイトはなぜ黒いのかということについて色々説明が分かれているようではっきりした答えにはたどり着きませんでした。
ITOに代わりグラフェンを透明電極層に用いた太陽電池の特許があったので今度はそれを読んでみます。
6/7(金)学習時間:6.5H
・岡野の化学(112)
・透明電極について
・先日から読んでいる太陽電池に関する特許の要旨を整理
課題)
・グラフェンを透明電極層に用いた太陽電池に関する特許を読む
・色素増感太陽電池について調べる
その他
・太陽電池に関する特許出願は中国が非常に伸びていると知った
・今はまだ高校物理の基礎もできていない状態だが、基礎固めができたら大学学部レベルの物性物理を勉強してもっと半導体関連の特許明細書を理解できるようになりたいという目標ができた
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