太陽電池の発電効率を考えるうえで、開放電圧、短絡電流、最大出力動作点という考え方があるということで調べました。
開放電圧と短絡電流とは
まずこの2つがどのように定義されているかというと、
開放電圧(Voc):
外部回路につながれておらず電流が流れていない状態での電圧。太陽電池が出せる最大電圧を表しす。
短絡電流(Isc);
電源の正極と負極が直接接続されているような状態での電流。太陽電池が出せる最大電流を表す。
これだけ読んでも今ひとつピンとこなかったのでAIに例えを出してもらいました。
AI:
家の屋根に大きな貯水タンクがあります。このタンクから地上に水を供給するためのホースがあります。この設定を使って、開放電圧と短絡電流を説明します。
水の流れ = 電流(I)
水がホースを通って流れる様子が電流に対応します。ホースを流れる水の量が多ければ、それが大きな電流を意味します。
水圧 = 電圧(V)
貯水タンクの水圧が電圧に対応します。水圧が高いほど、それが高い電圧を意味します。
開放電圧
ホースの先端を完全に閉じて、水が流れないようにした状態を考えましょう。
状況: ホースの先端が閉じているので、水は流れません。
結果: 貯水タンクの水圧(電圧)がホース全体にかかっていますが、水(電流)は流れません。
解放電圧: このときのホース内の最大水圧が「解放電圧」です。電流はゼロですが、電圧は最大です。
短絡電流
次に、ホースの先端を完全に開いて水を流す状態を考えます。
状況: ホースの先端が完全に開いているので、水が自由に流れます。
結果: 貯水タンクの水はホースを通って最大量で流れます。水圧(電圧)はほとんどなくなりますが、水の流れ(電流)は最大になります。
短絡電流: このときの最大の水の流れが「短絡電流」です。電圧はほぼゼロですが、電流は最大です。
なるほど、なんとなくイメージができました。
この例で言うと水の供給率が電力に相当すると考えられ、次のようにあらわすことができます。
水の流れ(電流) × 水圧(電圧) = エネルギーの供給速度(電力)
最大出力動作点
電力=電流×電圧
という式を見ると、太陽電池の最大電力は、
最大電流(短絡電流)×最大電圧(開放電圧)
で表せるような気がしますが実際はそう単純ではなく、
温度変化の影響を受けたり、キャリア(電子とホール)の再結合が起きたり、内部抵抗が関与したり、と様々な影響を受けます。
実際に太陽電池から取り出せる電力は、下図のように開放電圧と短絡電流とを結んだ曲線上を動く動作点と、その動作点における電流・電圧の積で考えます。
電力=電流×電圧ですから、動作点を曲線上で動かしてみて、その点を頂点として作られる四角形の面積が最大になるような場合を考えれば、最大電力を取り出せるということになります。このときの動作点が最大出力動作点です。
太陽電池の発電力を最大にするにはこの面積をいかに大きくするかということを考える必要があります。
その方法の一つとして、開放電圧と短絡電流の値を大きくするということが考えられそうです。
開放電圧を大きくするには
電圧は一般的には2点間の電位差と考えることができるため、太陽電池における開放電圧はp型半導体層とn型半導体層のエネルギーバンドを考えたとき、外部回路につながれていない状態での両者のフェルミ準位(電子の占有率が1/2になるエネルギーレベル)の差になると考えられます。
この差を広げるためには、半導体素材としてよく使われるSiよりもバンドギャップの大きいGaAsを使ったり、ドーピング濃度を調整してフェルミ準位をアクセプタ準位・ドナー準位にそれぞれ近づけることにより両者の差を大きくするといった方法があります。
短絡電流を大きくするには
短絡電流を大きくするためには、キャリア(電子と正孔)が回路の中を移動しやすい状態を作る必要があります。
そのためには反射防止膜を作ったり光吸収効率の高い素材を用いたりすることで光吸収効率を上げる工夫が必要です。
また半導体表面では原子の結合の相手がおらず未結合手が余った状態になっている場合が多く、これはキャリアの再結合につながってキャリアの移動を妨げてしまいます。これを防ぐために表面にSiO2などで不動態膜を作るパッシベーションという処理も太陽電池製造では重要になっています。
山形大学のこちらの資料を参考にしました。
https://fhirose.yz.yamagata-u.ac.jp/img/taiyoudenchi4.pdf
他にもわかりやすそうな講義資料が沢山出ていたので読んでみます。
6/5(水)学習時間:6.5H
・岡野の化学(108)~(109)
・開放電圧、短絡電流について
・パッシベーション処理について
課題)
・透明導電性材料について調べる
・エッチング後に使われるレジスト剥離液について調べる
・太陽電池に関する特許明細書の続きを読む
背景知識を調べながらなのでなかなか明細書が進まないが一通り知識をつければ類似の特許がもう少しスムーズに読めるようになると思うのでじっくり続けていきたい。
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