吸着と層について

「4645 学習における量質転換」で取り上げていただきありがとうございます。

まずはAIに定義させてみた方が自分で持っている知識より広い知識が出てくるので調べる取っ掛かりが多くなりますね。
質問も一回で終わりではなく、AIの答えを聞いてまた「自分はこういうふうに理解したがどうか?」「では、これとこれとの関係は?」という形で聞き返してラリーを続けるようにします。

今回は物理吸着の定義を調べてみました。すると、これまで気づいていなかった層構造の話が出てきたのでそのことを書いてみます。

AIとのやりとり


まずはAIに物理吸着の定義を聞いてみました。

自分:物理吸着について定義してください。

AI:物理吸着(ぶつりきゅうちゃく、Physical Adsorption)は、物質の表面に他の物質の分子が弱い力で付着する現象を指します。このプロセスは、化学反応を伴わず、分子間の弱い相互作用力(ファンデルワールス力や双極子相互作用など)によって引き起こされます。物理吸着は以下の特徴を持ちます。

低エネルギー結合:物理吸着は弱い相互作用力によるもので、化学吸着に比べて結合エネルギーが低いです。
可逆性:物理吸着は可逆的であり、温度や圧力の変化により容易に吸着・脱着が起こります。
低温での吸着:物理吸着は低温で起こりやすく、高温では吸着が減少します。
多層吸着:物理吸着では、単層だけでなく、多層の分子が表面に吸着することがあります。

この現象は、活性炭やシリカゲルなどの吸着剤がガスや液体の分子を捕捉するために利用され、環境工学や化学工業、物理化学の分野で重要な役割を果たします。

自分:「単層だけでなく、多層の分子が、表面に吸着する」ということをもう少し具体的に説明してください。

AI: 単層吸着: 活性炭の表面に最初に水蒸気の分子が吸着するとします。この最初の層が「単層吸着」です。この層は、活性炭の表面と水蒸気分子の間のファンデルワールス力によって保持されます。

多層吸着: 最初の単層が形成された後、さらに水蒸気分子が次の層に吸着します。ここでは、既に吸着されている水蒸気分子の上に、新しい水蒸気分子が積み重なるように吸着します。この過程は何層も続くことができ、結果として多層の水蒸気分子が活性炭の表面に吸着されます。

自分:なるほど、最初に吸着された吸着質と別の吸着質との間でまた吸着が起こり、どんどん重なっていくということですね。単層吸着と多層吸着は化学吸着でも物理吸着でも起こりうるのですか?

AI:

単層吸着と多層吸着はどちらも物理吸着で起こりうる現象ですが、化学吸着の場合には通常単層吸着しか起こりません。その理由を以下に説明します。
物理吸着

単層吸着: 物理吸着では、表面に最初の分子層が吸着します。この層は、物質の表面と分子との間の弱いファンデルワールス力や双極子相互作用などによって保持されます。
多層吸着: さらに分子が追加されると、既に吸着されている分子の上に新たな分子が積み重なることがあります。この多層吸着も物理吸着の特徴です。

化学吸着

単層吸着: 化学吸着では、表面の原子や分子と吸着される分子の間に強い化学結合(共有結合、イオン結合など)が形成されます。このため、吸着は表面の特定のサイトに限定され、通常は一層の吸着に留まります。なぜなら、化学結合が形成された後は、表面に新たな化学結合を形成するサイトが残らないからです。
多層吸着: 化学吸着では多層吸着はほとんど起こりません。これは、化学結合が非常に特異的で強力であるため、一層の吸着で完結するからです。

まとめ

物理吸着では、単層吸着も多層吸着も起こりうる。
化学吸着では、通常は単層吸着しか起こらない。

この違いは、物理吸着が分子間の弱い相互作用によって引き起こされ、化学吸着が強い化学結合によって引き起こされるためです。したがって、物理吸着は多層の分子が積み重なることができるのに対し、化学吸着は表面の化学結合サイトに限られるため、多層吸着は難しいのです。

自分:最初の層が化学吸着で、その次の層が物理吸着になるという場合は考えられませんか?

AI:はい、その通りです。化学吸着の上に物理吸着が起こる場合があります。このような現象は、特に高圧条件下や低温条件下で観察されることがあります。以下に、そのメカニズムと例を説明します。

吸着質の性質:
吸着質が強い分子間力を持つ場合、化学吸着した分子の上に物理吸着が起こりやすくなります。例えば、極性分子や水素結合性分子は、化学吸着した分子との間に強い相互作用を示すことがあります。
吸着条件:
高圧条件下では、吸着質の濃度が高くなるため、化学吸着した分子の上に物理吸着が起こる確率が増加します。また、低温条件下では、吸着質の運動エネルギーが低下するため、物理吸着が起こりやすくなります。
吸着質と吸着剤の組み合わせ:
特定の吸着質と吸着剤の組み合わせにおいて、化学吸着と物理吸着が共存することがあります。例えば、金属表面に対する一酸化炭素(CO)の吸着では、COが金属表面に化学吸着した上に、COの物理吸着が起こることが知られています。
吸着質の配向の変化:
化学吸着した分子の配向が、物理吸着に適した構造に変化することがあります。例えば、長鎖アルカンチオールが金属表面に化学吸着する場合、アルキル鎖が表面から立ち上がった配向をとることがあります。この配向変化により、アルキル鎖同士の間に物理吸着が起こりやすくなります。
実際の応用例:
触媒分野では、担持金属触媒において、金属ナノ粒子表面での化学吸着と物理吸着の共存が報告されています。また、自己組織化単分子膜(SAM)の形成過程においても、化学吸着した分子の上に物理吸着が起こる場合があります。

化学吸着と物理吸着が共存する現象は、吸着質の性質、吸着条件、吸着質と吸着剤の組み合わせ、吸着質の配向変化などの要因に依存します。このような複合的な吸着現象は、触媒、センサー、機能性材料などの分野で重要な役割を果たしています。

自分:化学吸着と物理吸着が競合する場合もありますか?

AI:化学吸着と物理吸着が同時に起こる場合、それらは競合関係にあると言えます。以下に、その競合メカニズムと影響について説明します。

吸着サイトの競争:
化学吸着と物理吸着は、吸着剤表面の吸着サイトを巡って競争します。化学吸着は特定の吸着サイトに強く結合するため、物理吸着が起こる有効な表面積が減少します。逆に、物理吸着が先に起こると、化学吸着に利用可能な吸着サイトが減少します。
吸着速度の差異:
一般的に、物理吸着は化学吸着よりも速く起こります。これは、物理吸着が弱い分子間力によって生じるのに対し、化学吸着では強い化学結合の形成が必要なためです。そのため、物理吸着が先に起こり、化学吸着を阻害する場合があります。
吸着平衡のシフト:
化学吸着と物理吸着の平衡は、温度や圧力などの条件に依存します。温度が高い場合、物理吸着が脱着しやすくなるため、化学吸着が優先的に起こります。一方、低温や高圧条件下では、物理吸着が優先的に起こる傾向があります。
吸着質の選択性:
化学吸着は特定の吸着質に対して高い選択性を示すのに対し、物理吸着は吸着質の物理的性質に依存するため、選択性が低くなります。そのため、混合物の吸着においては、化学吸着と物理吸着の競合が吸着質の選択性に影響を与えます。
吸着剤の性能への影響:
化学吸着と物理吸着の競合は、吸着剤の性能に大きな影響を与えます。例えば、触媒反応において、反応物質の化学吸着が望ましい場合、物理吸着による活性サイトのブロッキングは触媒性能を低下させます。一方、ガス分離や貯蔵において、物理吸着が主要な役割を果たす場合、化学吸着による吸着サイトの減少は性能低下につながります。

わかったことのまとめ

物理吸着と化学吸着では吸着によってできる層に違いがあります。

化学吸着の場合は最初に出会った吸着質と吸着剤の反応が終わるとその部位は他の吸着質と反応しなくなるので、1層目が飽和したら終わりを迎える単分子層吸着になります。
化学吸着した吸着質の上に物理吸着によって吸着質が積み重なる場合はありますが、その場合はやはり物理吸着によって多層構造が作られていると言えます。
物理吸着の場合は下の図のように、1層目、2層目、3層目…と重なっていく多分子層吸着が起こりやすいのですね。

https://www.micromeritics.com/particle-testing/analytical-testing/pore-analysis/

物理吸着には単分子層吸着にとどまる場合もあり、例えば界面活性剤が界面に並んで単分子膜を作るような場合は単分子層吸着といえます。

https://solutions.sanyo-chemical.co.jp/technology/2023/07/102496/

また、吸着の速度も物理吸着と化学吸着で違いがあるということが分かりました。
一般に化学吸着は物理吸着に比べて吸着速度が遅いです。

それは化学吸着が共有結合やイオン結合のような化学結合によって生じるためです。
化学結合が生じる、つまり化学反応が起きる場合には、エネルギー障壁の峠を越えていかないといけないのでした。そのため物理的相互作用によって起きる物理吸着に比べて反応に時間がかかり、吸着速度が遅くなります。

また吸着についての測定方法も少しだけ見えてきました。
吸着を測定する方法はいくつかあるようでそれを調べるのはまだ今後の課題なのですが、物理吸着の特徴として書いてきた多分子層吸着を対象にした測定の理論としてBET理論というものがあります。

先ほど載せた多分子層吸着の図では1層目がすべて埋まったら2層目、2層目が埋まったら3層目、という重なり方になっていましたが、BET理論では1層目、2層目、3層目の重なりが同時並行でできていくことを想定しているようです。

https://www.microtrac.com/jp/applications/knowledge-base/bet-theory/

多層構造が出来ていく過程にもいくつかパターンがあるのですね。
半導体や建築の壁など層構造を作るものは色々あると思いますが、層を形成していくプロセスを考えるときの切り口として持っておきたいと思います。

5/19(日)学習時間:12H
・岡野の化学(80)
・吸着について濃度勾配を含めて定義を確認
・物理吸着の相互作用について
・吸着の層について
課題)
・物理的相互作用について大まかにどのような相互作用かはわかったが、クーロン力についてはベクトルや位置エネルギーが関係するようなので物理の基礎をやってから見直す。
・π-π相互作用について、液晶や半導体高分子に使われる際の原理がわからなかったので、半導体や液晶の仕組みを理解してから確認する。
・岡野の化学は理論化学に入って水素の同位体のトリチウムの話が出たので、トリチウムと夜光塗料の関係を調べてみる。

その他
・4645 学習における量質転換
・4338 AIを教師にして学習を加速する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
うずら
〈レバレッジ特許翻訳講座16期生〉 翻訳とは無関係の会社員生活を送っていたが、30歳になったのを機に「これが最後の進路選択のチャンス」と考え直し、文系出身・翻訳未経験から特許翻訳者への険しい道を進むことを決意。