今までは日本語の特許明細書だけ読んでいましたが、最近読んだCMP関係はある程度内容が理解できてきたので、同じCMP関係で対訳のあるものを読んでみることにしました。
最初は自力で訳してみようとしましたが、英文での特許特有の言い回しに慣れておらず時間がかかってしまったため、とりあえず1件目は以下のように進めようと思います。
①英文を見て大体の意味を自分で考える
②公開訳を確認する
③対応関係をチェックしながら、公開訳が適切かを検討
④表現をストック
まずは請求項だけ上記の手順で確認したのですが、早速いくつか疑問が出てきました。
【原文】
The CMP composition of claim 1 wherein the chelating agent comprises at least one compound selected from the group consisting of a dicarboxylic acid, a polycarboxylic acid, an aminocarboxylic acid, a phosphate, a polyphosphate, an amino phosphonate, and a phosphonocarboxylic acid, a polymeric chelating agent, and a salt thereof.
【公開訳】
前記キレート剤が、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、リン酸塩、ポリリン酸塩、アミノリン酸塩及びホスホノカルボン酸、高分子キレート剤ならびにその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含む、請求項1に記載のCMP組成物。
公開訳は原文の通り訳していると思うのですが、キレート剤の成分となる化合物について、最後に「~ならびにその塩からなる・・・」とされている点が疑問に思いました。
「カルボン酸及びその塩」ならわかるのですが、「リン酸塩及びその塩」となるとリン酸塩はすでに塩なので「~とその塩」というのは少し違和感を抱いてしまいました。
カルボン酸系は「~酸」の形で書かれていてリン酸系は「~酸塩」の形で書かれているので、意図的に区別されているような気はするのですが、
例えば、カルボン酸に比べて酸性度の比較的強いリン酸の場合はpHの関係でリン酸単体ではなく塩として使うことが適しているため最初から「~酸塩」の形にしているというような理由でしょうか?
【原文】
A chemical-mechanical polishing (CMP) method for polishing a phase change alloy-containing substrate, the method comprising the steps of the following:
(a)
contacting a surface of a phase change alloy-containing substrate with a polishing pad and an aqueous CMP composition, the CMP composition comprising an aqueous carrier, a particulate abrasive material, an optional oxidizing agent, and a chelating agent capable of chelating the phase change alloy, a component thereof, or a substance formed therefrom during chemical-mechanical polishing, wherein the particulate abrasive is present in the composition in an amount of not more than 6% by weight; and・・・・
【公開訳】
相変化合金を含有する基材を研磨するための化学機械研磨(CMP)方法であって、下記の工程:
(a)
相変化合金を含有する基材の表面に、研磨パッドと、水性CMP組成物であって、水性キャリア、粒状研磨材料、任意の酸化剤及び前記相変化合金、その成分、あるいは化学機械研磨中に該組成物から形成される物質をキレート化することのできるキレート剤を含み、かつ前記粒状研磨材料が6重量%以下の量で存在しているCMP組成物とを接触させること、・・・・
このように英語の原文が長くて意味が取りづらい場合にも、訳す際にはあまり分を区切らない方が良いのでしょうか?
例えば以下のように切って訳すのは原文と離れるのであまりよくないのでしょうか?
【試訳】
(a)相変化合金を含有する基材の表面に、研磨パッドと水性CMP組成物とを接触させる工程。
前記CMP組成物は、水性キャリア、粒状研磨材料、キレート剤を含む。
該キレート剤は、任意の酸化剤及び前記相変化合金、その成分、あるいは化学機械研磨中に該組成物から形成される物質をキレート化することのできるキレート剤であって、
該粒状研磨材料は6重量%以下の量で該組成物中に存在している。
【原文】
The CMP method of claim 11 wherein the substrate comprises a germanium-antimony-tellurium (GST) alloy.
【公開訳】
前記基材がゲルマニウム・アンチモン・テルル(GST)合金を含む、請求項11に記載のCMP方法。
これは合金の表記方法について、「・」を使っているものを見たことがなかったので気になりました。
合金の表記としては、「・」ではなく「ー」でつないで、
「ゲルマニウム-アンチモン-テルル(GST)合金」
とした方が良いのではないかと思いました。
原文もハイフンでつないでいますし、同じ企業の別の特許明細書も探してみましたが「ー」でつないであるものがあったのでクライアントの指定というわけでもないと思います。
また岩波の理化学辞典や化学便覧の記載も「ー」になっていました。
【原文】
22.The CMP method of claim 11 wherein the substrate further comprises a liner material.
23.The CMP method of claim 22 wherein the liner material is selected from the group consisting of Ti, TiN, and a combination thereof.
24.The CMP method of claim 22 wherein the substrate further comprises the following: a layer of silicon dioxide underneath the GST alloy and liner material.
上記の “liner material” を公開訳は全て「線形材料」と訳しているのですが、「線形材料」をGoogle検索すると、「応力とひずみの関係が線形になる材料」のことだと出てきたので、この文脈では違うような気がします。
ここは、半導体の層に使われるライナー層のことを指していると思うので「ライナー材料」ではないでしょうか。
日本語の明細書だと少しずつ内容が理解できるようになってきた感覚があったのですが、対訳学習をしてみると疑問点だらけです。
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