岡野の化学で結晶構造について学習したので金属結晶の代表的な体心立方格子・面心立方格子・六方最密構造の他に共有結合結晶やイオン結晶でどんな結晶構造があるか調べていたところ、窒化ホウ素がいくつかの結晶構造をとるということを知りました。
調べたところをまとめてみます。
窒化ホウ素とダイヤモンド・グラファイト
窒化ホウ素はBとNの共有結合結晶ですが、周期表でCの両隣に位置するBとNの共有結合ということで、Cと似た性質を示します。
炭素にはダイヤモンドとグラファイトの同素体があり、
ダイヤモンドは正四面体の炭素原子が連なった結晶構造、
グラファイトはハチの巣状に共有結合したグラフェンシートがファンデルワールス力で層状に重なった結晶構造を作るのでした。
窒化ホウ素の場合も同様に、
ダイヤモンド型(正確には閃亜鉛鉱型)の結晶構造をもつ立方晶窒化ホウ素:c-BN(Cubic Boron Nitride)と、
グラファイトに似た構造の六方晶窒化ホウ素:h-BN(hexagonal Boron Nitride)が存在します。
グラファイトを高温・超高圧(1500℃近く、大気圧の5万倍以上の圧力)にするとダイヤモンドが合成されますが、窒化ホウ素の場合も、常圧下で安定して存在するh-BNを高温・超高圧にすることでc-BNが合成されます。
このほかw-BNと呼ばれるウルツ鉱型やr-BNと呼ばれる菱面体晶も存在しますが、よく使用されているのはc-BNとh-BNです。
h-BNの特徴と用途
h-BNの特徴は、ファンデルワールス力の弱い結びつきによる層構造をもつことにより、容易に層がすべるという性質があります。
この性質は潤滑剤に利用されたり、伸びの良さを生かしてファンデーションなどの化粧品に利用されています。
またグラファイトと異なり、h-BNにはπ電子雲が広がっておらず、バンドギャップも非常に大きいため、絶縁膜としての利用が注目されています。
同様の層構造を持つグラフェンをh-BN層で挟むことにより外部の酸素や水からの保護膜としても機能して、高いキャリア移動度を持つというグラフェンの特性を損なうことなく発揮させることができるようになります。
h-BNを大面積で合成する技術は困難とされてきたそうですが、2023年に九州大学らの研究で大面積での合成に成功したようです。
c-BNの特徴と用途
c-BNはダイヤモンド同様に強い共有結合で作られた結晶構造のため硬く、光学特性もダイヤモンドに似ています。
硬度を生かした用途としては切削工具が挙げられます。
ダイヤモンドは非常に硬いためどんなものにでも切削工具として利用できるのかと思いましたが弱点もあり、鉄に対しては使えません。
高温下ではダイヤモンドの炭素原子が鉄の中に拡散していき、ダイヤモンドが摩耗する現象が起こるためです。また700℃以上になると酸化が始まってしまいます。
(拡散の現象についてはもっと調べる必要がありますので課題にします。)
その点、c-BNは高い硬度を持ちながら鉄との反応が起こりにくいため、鉄の切削によく使われます。また1300℃ほどまでは酸化しないため、この点もダイヤモンドより優れているといえます。
またc-BNは半導体材料としても注目されています。よく使われるSiのバンドギャップが1.12eV程度であるのに対し、ダイヤモンドは5.47eV、c-BNはさらにそれより大きく6eV程度のバンドギャップを持ちます。
バンドギャップの大きな半導体はワイドギャップ半導体と呼ばれ、外部から強いエネルギーを与えても電子が励起しづらいため、結晶構造が安定しており高温・高圧環境に耐性があります。
またバンドギャップが大きいということは可視光を吸収せず透過しやすいという光学的特性にも通じるため、透明電極としての利用も期待されます。
参考)
㈱日新ダイヤモンド:ホームページ
国立研究開発法人物質・材料研究機構のサイト
NTT技術ジャーナル「新機能ワイドギャップ半導体の開拓」
産業技術総合研究所プレスリリース「六方晶窒化ホウ素の大面積合成とグラフェン集積デバイスを実現」
6/10(月)学習時間:5.5H
・岡野の化学(117)
・ミラー指数とそれが表す面について
・グラフェン含有膜を用いた透明電極に関する特許の続き(請求項途中)
課題)
・グラフェンの酸化・還元について調べる
・拡散について調べる
・グラフェン含有膜を用いた透明電極に関する特許の続き
その他
・「特許明細書のチェック法」第3章読了
コメントを残す