リチウムイオン電池のしくみとインターカレーション

岡野の化学で電池について学習したので、リチウムイオン電池のしくみについて調べてみました。

リチウムイオン電池とは

リチウムイオン電池とは、

 ・正極にコバルト酸リチウム
 ・負極に炭素
 ・電解液にリチウムイオンを含む有機電解液

などを用いる電池です。

鉛蓄電池と同じく、放電・充電を繰り返して使うことのできる二次電池に分類されます。

リチウムイオン電池は小型・軽量でありながら長寿命ということで、
スマートフォン、ノートPC、電気自動車、産業用ロボット、医療機器など様々な分野に利用されており、特に電気自動車分野での利用が注目されています。

https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20201106hitokoto.html

リチウムイオン電池の反応

リチウムイオン電池ではどのような化学反応が起きているのかを見てみましょう。

正極と負極での反応はそれぞれ次のようになっています。

正極)Li(1-x)CoO2 + xLi+ + xe ⇆ LiCoO2
負極)LixC6 ⇆ C6 + xLi+ xe

左辺→右辺に反応が進むのが放電反応
左辺←右辺に反応が進むのが充電反応です。

ここでxとなっているところが特徴的です。
xは0から1までの値を取ります。

リチウムイオン電池の電極材料は下図のような層状になっており、その層の間にLiイオンが入りこむ現象(インターカレーション)によって反応が起こります。

https://criepi.denken.or.jp/press/journal/techtrend/200914.html

この図は拡大されているので電極が何本も立っているように見えるかもしれませんがそうではなくて、負極であれば図の灰色の棒はグラフェンシートの層の一枚一枚を模式的に表しており、正極であればコバルト酸リチウムを構成するLi層とCoO2層を表しています。

負極)

https://www.n-kokuen.com/graphite/

正極)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E9%85%B8%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Lithium-cobalt-oxide-3D-balls.png

xが0から1の間をとるのはどういうことかというと、
層間にLiイオンを取り込む反応が部分的進行することを表しています。

x=0のとき:
電極の層間にLiイオンが全く取り込まれていない状態を表します。
完全に放電したときの負極の状態、もしくは完全に充電したときの正極の状態です。

x=1のとき:
電極の層間に取り込める最大量のLiイオンが取り込まれている状態を表します。
完全に放電したときの正極の状態、もしくは完全に充電したときの負極の状態です。

0<x<1のとき:
どちらの電極の層にもLiイオンが部分的に取り込まれており、放充電が過渡的に進行していることを表します。

層間に取り込めるだけのLiイオンをすべて取り込んだ状態がx=1となります。
0<x<1の場合はその中間状態で、部分的にLiイオンを取り込んだ状態を表します。
このような中間状態でも反応が進むことになります。

リチウムイオンが使われる理由

Liイオンが選ばれる理由は色々ありますが、主な理由を2つ挙げてみます。

1つはLiの標準電極電位によるものです。
Liは非常にイオンになりやすく、標準電極電位が-3.04Vのため、イオン化しにくい炭素と電池を作ると起電力が大きくなります。

https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1205/18/news012.html

2つ目はLiイオンのイオン半径が小さいことによるものです。

インターカレーションを考えるとき、電極材料の層構造の間にイオンが入り込むことになるので、もしこのイオンが大きくなると層間の距離よりも大きくなってしまい層構造に入り込めないということになります。

その点、Liイオンのイオン半径は0.68Åと1価の陽イオンの中では最小です。
もともとLi原子は原子番号が小さく原子半径も小さいですが、陽イオンになると最外殻がL殻からK殻になるので核の引力を受けやすくなりイオン半径は原子半径の1.52Åよりさらに小さくなります。

DNAにおけるインターカレーション

改めてインターカレーションとは、
 ある物質の結晶構造や層構造の間に別の原子や分子が挿入される現象を指します。

リチウムイオン電池の例を見てきましたが、DNAでもインターカレーションが起こります。

DNAは塩基同士が水素結合やベンゼン環のπ電子によるスタッキングなど様々な相互作用によりらせん構造を構成しています。

塩基対が連続してできる層の空間には平面構造を有する多環式芳香族化合物が入り込みやすく、挿入が起きると糖とリン酸の結合にひずみが生じ、DNAの複製、RNAの合成ができなくなります。

http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/~kkudo/Jul12download.pdf

挿入する側の物質をインターカレーターと言いますが、発がん性物質がインターカレーターになってDNAに異常をもたらす場合があります。

また逆に、抗がん剤をインターカレーターとすることで、がん化したDNAに入り込んで複製を防ぐことにも利用されています。

このほか、蛍光物質をインターカレーターとして発光の様子をモニタリングすることでDNAの増幅を測定するのがリアルタイムPCRという測定方法があります。

リチウムイオン電池のしくみについて調べ始めたときはDNAの話につながるとは思っていませんでした。今回は触れられませんでしたがナノコンポジットにもインターカレーションが使われているようです。
意外なところで知識がつながることが勉強の面白さだなと感じます。

6/28(金)学習時間:5.25H
・リチウムイオン電池の仕組みについて
・インターカレーションについて
・溶解析出型、ロッキングチェア型、リザーブ型について(途中)

課題)
・溶解析出型、ロッキングチェア型、リザーブ型についてまとめる
・EUVリソグラフィのしくみについて

その他
・2845 ブログの育て方
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うずら
〈レバレッジ特許翻訳講座16期生〉 翻訳とは無関係の会社員生活を送っていたが、30歳になったのを機に「これが最後の進路選択のチャンス」と考え直し、文系出身・翻訳未経験から特許翻訳者への険しい道を進むことを決意。