岡野の化学は理論化学に入り、水素には中性子の数の違う3種類の同位体が存在するという話が出てきました。
そこで、水素の同位体であるトリチウムについてGoogle検索に入れてみたところ、「腕時計」というキーワードが予測で出てきたので、「なぜトリチウムと腕時計が関係するのだろう?」と思って調べてみました。
トリチウムのベータ線放出
同位体にも種類があり、安定同位体と放射性同位体に分けられます。
水素に関していえば、トリチウムだけが放射性同位体です。
安定同位体は名前の通り安定した状態で存在するのですが、放射性同位体は原子核が不安定な状態であるため、時間の経過とともに崩壊して安定な状態へと変化していきます。
トリチウムの場合は崩壊後にヘリウム3と呼ばれる、陽子2個と中性子1個からなるヘリウムの安定同位体の形に変化します。
どのようにしてトリチウムがヘリウムになるのかというと、トリチウムの中性子のひとつが、陽子と電子と反ニュートリノという素粒子に変化します。
高校では陽子と中性子はそれ以上分解できないもののように教わりましたが、さらに素粒子と呼ばれるものに分解されます。
陽子と中性子は構成は異なるものの同じダウンクォークとアップクォークという素粒子で構成されているためこのような変化が起こりうるようです。
トリチウムにもともと2個あった中性子の1つが陽子に変わることで陽子が合計2つになり、原子番号2のヘリウムに変化します。
その際に放出される電子をβ線と呼び、これが放射線の一種です。
ヘリウムになるとき電子数も1から2に増えないといけないはずなのに電子を放出してしまって残りの1個はどこから持ってくるのだろう?と思いましたが、これは周囲の他の原子からもらってくるようです。
放射線にはβ線の他にα線やγ線や中性子線など強さの違うものがあり、放射性同位体の種類や崩壊過程によって異なりますが、トリチウムの場合は比較的弱いβ線が出ます。
夜光塗料との関係
さて、トリチウムが腕時計と何の関係があるのかという話ですが、腕時計には暗闇でも文字盤が見えるように夜光塗料が塗られているものがあります。
この夜光塗料にトリチウムが使われることがあります。
最初はトリチウム自体が発光するのかと思って調べていましたがそうではなく、夜光塗料には一緒に蛍光物質が含まれており、トリチウムの放出するβ線が蛍光物質を励起状態にし、その励起状態が元の基底状態に戻る際に発光するという原理です。
1つのトリチウム原子が崩壊するのは一瞬ですが、多数のトリチウム原子がそれぞれのタイミングで崩壊するため、β線は継続的に放出されます。
そのため、発光させたいときに都度外部からエネルギーを与えることなく文字盤を光らせることができます。
トリチウムの出すβ線は先ほどの図にあるように弱いもので人体への影響はないと考えてよいようですが、トリチウム以外の放射性同位体も含め、放射線を使った夜光塗料は被爆への懸念から使われなくなったケースもあるようです。
蓄光について
放射線の力を借りずに夜間に発光させる仕組みとして発展してきたものに、蓄光塗料を使う方法があります。
蓄光塗料の場合、硫化亜鉛系やアルミン酸ストロンチウム系の化合物が蓄光剤として使われており、太陽光や蛍光灯などから光エネルギーを蓄えて、それを少しずつ目に見える波長の光として放出することにより継続的に発光するという仕組みです。
蓄光塗料は燐光現象を利用したものです。
燐光は蛍光と同様に励起状態から基底状態に戻る際の光エネルギーの放出による発光ですが、発光の継続時間が異なります。
これは励起した際の電子のスピンの向きに関係します。
蛍光の場合、電子が励起するときにスピンの向きはそのままの状態で励起します。
一方で燐光の場合はスピンが反転した状態になります。電子は逆向きのスピン2個ずつのペアで軌道に入る規則になっているので、逆向き状態になったスピンを元に戻す必要があり、基底状態に戻るまでに時間がかかります。そのため、燐光の場合は徐々に光を放出することになるということのようです。
なぜ燐光の場合はスピンが反転するのか、硫化亜鉛系やアルミン酸ストロンチウム系の化合物にそのような状態が起こりやすくなる理由については今後の課題として知子の情報に入れておきます。
夜光塗料や蓄光塗料の発光のしくみは非常口のサインや蛍光テープなどに使われているようなので関連する特許明細書を探してみます。
参考)
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/images/210428.pdf
https://www.qst.go.jp/site/jt60/4933.html
http://www.senshu.phys.tohoku.ac.jp/houmon/vol7.html
https://www.rasin.co.jp/blog/special/luminouspainted/
https://marketing.nitto-lmaterials.com/column/luminous-comparison/
5/20(月)学習時間:6.5H
・岡野の化学(81)~(82)
・トリチウムのベータ崩壊と夜光塗料の仕組みについて
課題)
・夜光塗料・蓄光塗料関係の特許明細書を見てみる
・発光については今まで調べてきた中で何度か触れてきたのでAIを使ってノート構成を作って全体像を確認する
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